すをばふのおもちゃ箱

2017年1月21日土曜日

もう一つのスターウォーズが最高のスターウォーズだった話

どうも、スターウォーズに人生をめちゃくちゃにされた男です。

ローグ・ワン、IMAX 3D字幕でもちろん公開日に見ました。
その後も3D吹き替えでもう一回。
昨日はようやく2D字幕の極上爆音上映で3回目。
フォースの覚醒は10回見ましたが、あっちよりも更に好みなのでもっと見たい。
金と時間さえあれば・・・。

3回見て、関連書籍も一通り目を通したという事で思ったことをネタバレ全開で備忘録。




ちなみに私のスターウォーズの知識は、映画全部とアニメ、設定集など関連書籍にフィギュアやプラモ、スピンオフ小説もレジェンズとカノン全てに手を出している程度です。(レジェンズとはエピソード7撮影前まで作られていた小説などで拡張されていた世界観のこと。スターウォーズがディズニーに売却された後「これから我々が作る話がカノン(正史)です」と言われ、すべてなかったことになってしまった)


新しい方のタイムラインは今こんな感じ



カメラで気になった事があるので本題の前に描いちゃう。
今回のカメラワーク。妙に被写体深度の操作が多くないだろうか。どのシーンでも背景や喋っている人物ごとにピントがはっきりと分けて合わせられている。そしてワンカットの中でピントを合わせる対象がコロコロ変わるのだ。いいカメラを手に入れたのか優秀なカメラマンがいたのか知らないが、割と珍しいなぁと思って見てた。

VFXもすごい。
特にスターデストロイヤーとデス・スターとシールドゲート。この3つだけ力のいれ方が別格だった。CGなのに1作目の模型の質感を完全再現してる。壊れ方にも力が入ってて、爆発と数個の破片でごまかさずに破片パーツを手間を惜しまず量産して砕け散らせてた。ハンマーヘッド激突の凹み、スターデストロイヤー同士の衝突、どこを取っても素晴らしい破壊シーン。スタートレックBEYONDもそうだけど、この2作が同時にCGなのにあえて模型っぽさ、おもちゃっぽさを出してるのが面白かった。次点はX-ウィングとY-ウィング。飛んでる時の姿勢制御の動きとシールドゲートに突っ込んだX-ウィングのポッドレースを彷彿とさせる破壊&滑り。スカリフで撃墜したTIEの爆風に回転しながら突っ込んだ時の気流による爆炎の巻き込みがすごかった。有能CG班。


オープニングテロップ

どのメディアでも散々言われてきたが、今作の着想は、第1作目オープニングのテロップから来ている。「反乱軍スパイが帝国の究極兵器に関する秘密の設計図を盗み出すことに成功した」というこの一文を映画化したのがローグ・ワン、と言われている。がしかし、そこはめんどくさいオタクの私。できればその少し前のテロップの事も、もう少し触れて欲しい。「反乱軍の宇宙艦隊は秘密基地から奇襲攻撃を仕掛け、初めての勝利を手にした」という部分。これはスカリフの戦いの事であり、あれが実は初勝利だったのだ。ということをもっと大切にしていきたい。




たくさんの惑星

ローグ・ワンにはたくさんの惑星が出てくる。
もちろんレジェンズとはまったく違うので、惑星の名前も位置も憶えなおしだ。

ラムー:アウター・リムの何もない地味な田舎惑星。アーソ一家が隠れ住む。

カフリーンの環:エクスパンション・リージョンにある、小惑星帯を人工の街で繋いだような外観の交易地。

ウォバニ:ミッド・リムにある惑星。帝国の強制収容所がある労働キャンプが設置されている。

ヤヴィン4:旧作ファンもなじみ深い反乱軍秘密基地のあるアウター・リムの惑星。

ジェダ:ミッド・リムに位置する、フォースの信徒が聖地とする惑星。聖都ジェダやホイルズの寺院がある。ジェダイが先かジェダが先か議論は絶えない。

イードゥー:険しい岩山に覆われた嵐が吹き荒れるアウター・リムの惑星。帝国のカイバークリスタル精製所がある。

オルデラン:銀河の中心、コア・ワールドの惑星。反乱軍のオーガナ議員やレイア姫の住む惑星。デス・スターのスーパーレーザー記念すべき全力照射第1号になる。

コルサント:コア・ワールドのさらに中心、銀河のど真ん中に位置する首都惑星。

ムスタファー:溶岩惑星ムスタファー、シスの復讐の「彼の地」である。



気づいて嬉しい小ネタ

ローグ・ワンには、過去作を知れば知るほど楽しい要素が満載。そんな物の解説はあちこちで既にやってるので、ここではそれを見たときどんな反応をすればスターウォーズオタクぶれるか実演する。

ジンのおもちゃ

映画冒頭の農場シーン。ジンの家にはおもちゃがたくさんあった。これらはどれもスターウォーズで見たことあるものばかり。しかし、尺の都合で映るシーンは一瞬しかない。「帝国の逆襲」のワンパやストームトルーパーの人形(これだけまじまじと映る)以外にも、「シスの復讐」に登場したクローンの戦闘機ARC−170スターファイターのおもちゃがある。女の子に戦闘機の木彫りのおもちゃを与えるあたりに、兵器開発者ゲイレンの兵器オタクっぽさが見受けられる。

T-15

スカリフのストームトルーパーの「T-15が退役らしい」「今更だよな」という会話。これは新たなる希望でベンがトラクタービームを切るシーンの「新型のT-16見たか」というあのシーンのオマージュ。フォースの覚醒には「T-17もう見たか」というセリフが出てくる。息の長いシリーズである。
ルークの持ってるこれがT-16”スカイホッパー”





ジェダ

フォースの聖地ジェダ・シティ。細かい能書きは省くが、ジェダイ寺院らしき遺跡や、ライトセーバーを持った石像が散見するあたりもっと深く知りたい惑星筆頭。ジンたちは聖都のマーケットでドクター・コーネリアス・エヴァザンとポンダ・バーバにぶつかる。この二人は新たなる希望の、モス・アイズリー宇宙港の酒場に登場する悪党コンビだ。まさかジェダの悲劇を生き延びた強運の持ち主だったとは。また、オタクとして重要なワード「ホイルス」が、初めて銀幕デビューを飾った。劇中では「ウィルズ」と訳されていたが、スピンオフ厨的にはホイルスが馴染み深い。ホイルスとはそもそも、昔ルーカスが作ろうとした設定。スターウォーズそのものが、ホイルスによって語り継がれる銀河史であるという設定だ。結局これは無くなったが、スターウォーズの世界にはことあるごとにホイルスが登場する。ジェダイ絡みのシャーマン的な感じに思っていた。ローグ・ワンでは、ジェダイを信奉する宗教組織みたいになっている模様。チアルートやベイズも、元はそこの修行僧だったらしい。





オビ=ワンに手を切られてしまう
哀れなドクター・エヴァザンと
その相棒バーバ




反乱軍のみなさん

反乱軍のメンバーにも「あっ」と思う人物が。例えば反乱軍最高指導者のモン・モスマ。初登場はエピソード6。アニメ「クローンウォーズ」にも出てきたが、ローグ・ワン絡みで言えばやはりエピソード3の削除されたシーンだ。これは、アミダラとオーガナ、モスマが会合を開いている場面。モン・モスマが分離主義者とは違うやり方でパルパテイィーン最高議長の暴走と戦う誘いを持ちかけるが、アミダラがそれを拒否するというシーンである。オーガナ議員はこれに賛同、アニメ「反乱者たち」でも手助けしてくれる。ローグ・ワンで嬉しかったのは、何と言ってもモスマとオーガナの俳優がこの削除シーンと同じだったことだ。若いモスマはもちろん「ジェダイの帰還」とは違う女優だ。しかし、削除シーンを見たとき真っ先に思ったのは「この人すっごいモン・モスマっぽい!」だった。彼女以上に若いモスマを演じられる人はいないだろう。オーガナ議員もいい感じに老けて威厳があった。エピソード3公開から10年以上経ち、俳優の老け方もいい感じになっていたところにローグ・ワンの撮影があったことを神に感謝する。

エピソード3の削除シーン

中隊長

反乱軍艦隊の花形といえばやはり戦闘機中隊。中でもローグ中隊、レッド中隊、ゴールド中隊は一番有名だろう。ローグ中隊は帝国の逆襲から登場。以降は反乱軍の要になっているが、おそらくこの由来も、勇敢な行動で反乱軍に初の勝利をもたらしたローグ・ワンなのだろう。レッド中隊はルーク・スカイウォーカーも所属したX-ウィング中隊だ。リーダーはガーヴェン・ドレイス。ルークに「お父さんと飛んだことがある」と話しかけてくる大柄のナイスガイ。(アナキンとクローン戦争で共に戦った話はレジェンズになった気がする)ゴールド中隊はY-ウィングを主軸とする爆撃機部隊。リーダーはジョン・”ダッチ”・ヴァンダー。ここで涙が出るほど感動したのは、レッドリーダーとゴールドリーダーのローグ・ワン出演である。二人は1977年の第1作目「新たなる希望」に登場。デス・スターの戦いで両者とも死亡した。そんな彼らの未使用映像をギャレス監督が発掘。デジタル加工で綺麗にし、コクピットの窓の外の背景だけ入れ替え、彼らをスカリフの戦いに参戦させたのだ。セリフも「レッドリーダー、スタンバイ」などそのまま使えるものだったので自然に組み込まれている。デス・スターの戦いの直前に、スカリフの重大な戦闘に彼らも参加していた。特に、見せ場なく撃墜されたゴールドリーダーには、中隊を率いてシールドゲートに空爆するという最高の見せ場も用意。(Y-ウィングがちゃんと爆撃機してるところもわりと貴重である)これを見た後に新たなる希望を見れば、彼らに歴戦のパイロットとしての「深み」が増して見て取れるのではないだろうか。おまけに、レッド5が撃墜されるシーンを入れることでルークがレッド5になる穴を開ける。スカリフで艦隊やブルー中隊が全滅したので、新たなる希望のデス・スター攻撃はレッド・ゴールド中隊のみで行っている設定にもつじつまが合う。ゲイレンの裏切りも合わせて40年間言われ続けた「総力戦が小規模すぎるしデス・スターを設計したやつは自爆装置を取り付けたバカ」という映画のご都合的部分を全て矯正したのである。

ゴールドリーダー
レッドリーダー






アンティリーズ船長

スターウォーズのややこしいところに、アンティリーズがやたらいるというものがある。一番有名なのは、反乱軍パイロットのウェッジ・アンティリーズではないだろうか。有名なパイロットを輩出することで有名な惑星コレリアの出身で(ハン・ソロもここの出身)、最も尊敬されるローグ中隊のリーダーだ。見出しにもなってるアンティリーズ船長は、ベイル・オーガナ議員の部下であるレイマス・アンティリーズである。タンディヴⅣの船長で、アミダラの手を離れたC-3POとR2-D2の世話を任されていた。ダース・ヴェイダーにフォースも使わず首を捻り潰された貴重な人材だが、姫と設計図の場所を吐かなかった忠義は大したもんである。ローグ・ワンではオーガナ議員に名前を呼ばれるシーンがある。(ここでレイアとオビ=ワンにうっすら言及するの最高だよね。「お友達のジェダイ」って死ぬ前に一度言ってみたい)もう一人、ベイル・アンティリーズというキャラがいる。「ファントム・メナス」の最高議長選挙でパルパティーンの対抗馬だったオルデランの議員だ。オルデラン、ベイル、アンティリーズ、いろんなキャラの要素をごっちゃに合わせたみたいなややこしいキャラだったなぁ以上の感想はない。









反乱者たち

世界中で放送中のアニメ「反乱者たち」は、主人公のエズラがジェダイの生き残りケイナン率いる反乱組織に参加。後に反乱同盟軍と合流して戦いに参加することになる。という話である。これはもちろんカノンであり、その設定はローグ・ワンでも大いに活かされている。例えば、スターデストロイヤーを2隻も沈め、同時にシールドゲートも粉砕する大活躍を見せたハンマーヘッドコルベット。スカリフの戦いに2隻参加しているのを確認した。あれは反乱者たちシーズン2の第11話「ロザルに来た姫」にて、オーガナ議員の使いでやってきたレイア姫から3隻寄贈された船なのだ。宇宙戦艦ヤマト2199第1話のゆきかぜを彷彿とさせるブリッジのシーンと突撃戦法には正直胸が躍った。(頭突きをかまして亜光速エンジンで押すとか天才かギャレス)また、エズラたちの宇宙船ゴーストは、ローグ・ワンに2回も登場する。1回目はジンが誘拐され、反乱軍の委員会に任務を言い渡された後のシーン。U-ウィングに乗り込む直前、広場を空から俯瞰で映すシーンがあるが、その画面左上にゴーストの機体が映り込んでいる。おそらくヤヴィンで補給をしていたのだろう。次に登場するのはスカリフ上空戦。終結した反乱軍艦隊の中に参戦している。先日公開された反乱者たちシーズン3の予告が公開された。ソウ・ゲレラなども登場し、このままいけばいつか、スカリフの戦いをゴーストクルーの目線から見た話が作られるかもしれない。関係ないが、概ね肯定して見てる反乱者たちだが、ダース・モールの扱いだけは許せない。クローンウォーズが嫌いな理由もそれだが、下半身を機械にして生き返ったのだ。(昔そういうコミックかなんかがあった気もするが)脳筋の野獣なモールが好きだった当方としては、老いてシスの賢者っぽくなったよくしゃべるモールは好かない。公式に「おい!静かに眠らせておけよ!」と叫びたい気持ちだ。なんとシーズン3では、ダース・モールが再びオビ=ワンと剣を交えるらしいのでそちらも楽しみにしている。最後に、反乱者たちネタが二つある。一つは反乱軍会議直後のシーン。艦隊を出せないと言われ落ち込むジンの頭の上から「シンドゥーラ将軍」と招集をかけるアナウンスが流れる。このシンドゥーラ将軍はおそらく、ゴーストの船長ヘラ・シンドゥーラと思われる。彼女の父も将軍だが、惑星ライロスで別行動しているはずなので、ヘラが将軍になっていたと考える方が自然だ。そして、ゴーストメンバー初の実写化の名誉が与えられたのは、アウトローなR2ユニット”チョッパー”だ。帝国の無線を傍受した通信手がモン・モスマに駆け寄るシーン。そこで一瞬だけ画面を横切る姿が確認出来る。
ヘラ・シンドゥーラ
宇宙船”ゴースト”
スカリフの戦いに参戦するゴースト
右に飛んでいるのはハンマーヘッドコルベット
アニメのチョッパー












ローグ・ワンのチョッパー









ソウ・ゲレラ

ジンの育ての親、ソウ・ゲレラ。クローンウォーズに登場した時はオンダロンの戦士だった。アナキンやオビ=ワンと戦う4話ほどの話だった気がするが、そんなに面白くなかったのかあまり記憶にない。その時はフォレスト・ウィテカーには似ても似つかないが、どうやら反乱者たちに登場するソウのモデリングはなかなか似ているようだ。過激なテロリストとして知られるソウ。映画には体のほとんどが機械になり、呼吸器を使うシーンがあるなど、かなりダース・ヴェイダーを意識したキャラにしている。疑心暗鬼に陥り全てが罠に見える狂気に落ちた様は、「ラスト・キング・オブ・スコットランド」の狂った独裁者の演技でアカデミー賞を獲得した、あのフォレスト・ウィテカーの再来だった。しかし、ジンのことを大切に思っていたのは本当らしい。過激派の仲間が帝国軍人関係者のジンを使って揺さぶりをかける作戦を考えてることを知り、ジンを置きざりにして立ち去ったり、キャシアンからジンを守ろうとしたり。狂人と父親の演技の切り替えは流石オスカー俳優と言ったところである。




ターキンとレイア

今回最も興奮するシーン、ターキンの復活だ。かつて1作目でターキン総督を演じたピーター・カッシングは23年も前に他界している。そんな彼を、なんとローグ・ワンはCGIで蘇らせたのだ。伝説の名優がスクリーンに帰ってきた。出演の噂を聞いたときは正直、後ろ姿に似たような喋りのセリフを入れる程度だと思っていた。だが、蓋を開けてみたらターキンが振り向く!喋る!表情変わる!顔アップにしても違和感ない!というとんでもない出来だった。故人の復活なんてまさに神の所業だ。演じたのはガイ・ヘンリーと言う俳優。背格好がカッシングに似ており、喋り方も完璧にコピーしてきた。そして顔をCGIでカッシングにすげ替えた。その完成度たるや、最初の登場シーンは(ほぼほぼ完璧ながら)微妙にアニメっぽさが残っていた。(そう思ったのも2回目以降だが)しかし、デス・スター試射以降のシーンは、何回見直しても一切の違和感を感じない。CGっぽさが全くないのだ。このターキンの復活は、この映画のどのシーンよりも金と時間と手間がかかったと聞く。だがこの偉業は、映画史に永遠に刻み込まれるだろう。若かりしレイア姫も、同じ手法で蘇った。哀しいかな、キャリー・フィッシャーは先月、不幸にも病気で急逝してしまった。エピソード8は撮影済みなものの、9に関しては重大な出番があったにもかかわらず、撮影前に亡くなってしまったのだ。脚本的にもここにきて大幅に舵を切らねばならない。ターキンのようにCGIで蘇らせると言うチャンスに「希望」を見いだせなくもないが、故人を映画に出演させることに倫理的な問題を主張する人が少なからずいることも確かだ。一体どうなるか、ディズニーの判断を待ちたい。


ダース・ヴェイダー

もう一つの大きなサプライズ、ダース・ヴェイダーの復活だ。暗黒卿ダース・ヴェイダーがスクリーンに現れるのはシスの復讐以来。おまけに今回は、反乱軍兵士相手に大立ち回りをするというファン感涙のサービスシーンまで用意されていた。後から聞いた話によると、あそこは追加撮影シーンだったらしい。ヴェイダーの声はもちろん、ジェームズ・アール・ジョーンズその人だ。日本語吹き替え版の大平透さんは既に亡くなっているため、日本語版は反乱者たちでもヴェイダーを吹き替えている楠大典さんになっている。反乱者たちのヴェイダーは少し若いのでありだと思ったが、やはり映画のヴェイダーになると少し若すぎるような気もした。しかし、声の重厚さと迫力は負けていないとても良い采配だと思う。ヴェイダーの城は、発想自体は帝国の逆襲の頃から存在したが、今回初めて映像化された。あえてムスタファーに城を築くことで、憎しみを忘れない臥薪嘗胆な生活を送ったヴェイダー卿。456に出てこないのもオビ=ワンに勝ったことであの城に戻る理由がなくなったのだと考えれば納得。最後の大暴れシーンも、旧三部作の悠然とした立ち居振る舞いのヴェイダーでありながら、ローグ・ワンの迫力ある戦闘シーンに埋もれない圧倒的オーラがあった。(バトルフロントでヴェイダーを使うと大体あんな感じになる気もする)ローグ・ワンは、絶対に勝てない圧倒的絶望としてのデス・スターとダース・ヴェイダーを復権させてくれた。

希望のリレー

希望の橋渡しはどこから始まっていたのだろう。ソウ・ゲレラがメッセージを伝えたジンを逃し、ボーディが通信機を繋ぐ間、敵を引きつけて撃たれた兵士たち。設計図を受け取った艦隊、データをディスクに焼いた兵士、それを次々に受け渡し、姫がR2に、R2がルークに、ルークが反乱軍に届けることになる。希望のバトンはたくさんの人の手を渡り、タンディヴⅣの白く明るい船内が画面に映った瞬間、もう既に映画はローグ・ワンから新たなる希望にスイッチしていた。新たなる希望の冒頭の逆再生のようなカメラアングルが、更に映画の橋渡しを自然にする。設計図を送信し終えたジンとキャシアンの「誰か受け取ってくれたかな」というセリフ。誰が受け取ったか知ることもなく、ただ絶対に誰かが受け取ったと信じて歩く二人が切なすぎる。目の前に迫るデス・スターの死の光が、希望の光のよう(タトゥイーンの太陽のオマージュにも見える)に輝いて見えながら死を迎える演出に熱い思いがこみ上げてくる。


フォースとは

長々と語ったが、一番感動したのはギャレス監督のフォースの捉え方だ。新三部作は直撃世代なので、特に文句もなく好きな部類である。しかし、唯一許せないのは「ミディ=クロリアン」という言葉だ。元来フォースとは神秘的な力のはずだった。東洋の神秘主義が流行した時代、信心深く修行を積めばフォースを使える、フォースと共にあれる。それは積み重ねた業によって得られる、そんな夢のような神秘の世界の話のはずだった。そこに現れたのがミディ=クロリアン。ファントム・メナスで言及された言葉だが、簡単に言うと「あらゆる生物の細胞に生息する知的な強制生物」である。これを体内に多く保有するほど、フォースの才能があるとされる。一般の人間の体内には2500個未満だが、アナキンは20000個以上保有していた。これはヨーダを超える数値らしい。諸悪の根源はこれだ。これまで神秘の力を信じて信仰してきたのに、突然「フォースはミディ=クロリアンっていう血筋の才能が必須なんだ」と言われたら、そりゃ怒りたくもなる。まさか遺伝的作用で優劣がつけられる設定にされてしまうなんて。ネットに蔓延する「誰が一番強いか論争」なんていうクソどうでもいい話題が盛り上がる責任の一端はこいつにあると思う。どうやらギャレスや、フォースの覚醒を監督したJ.J.エイブラムスも似た考えを持っているらしく、新作にはミディ=クロリアンのミの字もなかった。フォースの神秘性の時代の帰還である。極め付けはローグ・ワンのチアルートだ。ホイルスの守護者でジェダイ信奉者の彼。ベイズも昔は熱心な信者だったらしいが、帝国の勃興ですっかりやさぐれた傭兵みたいになっていた。そんな時代にフォースを信じ続けたチアルート。長年の厳しい修行と信心深い心で、彼はジェダイでないにもかかわらず、フォースを通じてあらゆるものが見えるようになっていた。これはまさお叶える存在だ。ギャレスとチアルートのおかげで、フォースの道に光明が差したと思った。



最後に

他にも、帝国の構造物データの中にブラック・セーバーなる、J・アンダースンの小説「ダークセーバー」を彷彿とさせる名前が登場したり、ピンときた事象は数知れず。
個人的にはラダス提督の旗艦「プロファンディティ」が大好きだ。モン・カラマリのスタークルーザーらしい流線型のデザインに、船体を縦に貫いたヒレのような柱。その一番下に艦橋があるというデザインに心底惚れた。フォースの覚醒は宇宙戦がなくて寂しい思いをしたが、ローグ・ワンはその損失を補って余りある最高の宇宙空間戦闘を作ってくれた。ギャレスが我々と同じくジェダイの帰還の艦隊戦が大好きなのが伝わる。

ジェダイの帰還に匹敵するシリーズ最高の艦隊集結シーンである
ギャレス監督については、「子供がストームトルーパーや宇宙船のフィギュアでやるドンパチ遊びを、本物を使ってやってみた」みたいな印象。童心に訴えかけてくるようなワクワク感がある。大人に金と立派なおもちゃを渡すとこうなるのだ。
まるであの兵器やこんなシーンの見たかったアングルを共有して映画にしてくれたような。と言いたくなるほど脳内のイメージを完璧に再現されてしまった。(好みの傾向が同じタイプのオタクということかしら)

書きそびれたことを書くと、チアルートが目隠しをされたときの「冗談だろ、私は盲目だぞ」はアドリブらしい。キャシアンがK2に殴られるのもアドリブ(よく見ると手で押さえてるふりをして笑ってる)だそうだ。PS4版のバトルフロントに実装されているX-ウィングVR。あれはX-ウィングのボタンを自分で押してSフォイルを展開できたりする本当に素晴らしいゲームだ。実はあのミッションはローグ・ワンのスピンオフになっている。(スピンオフのスピンオフだ)主人公の小隊は、とある船を護送する命令を受ける。その船こそ、ジンを救出した帰り道のK-2SOが操縦するU-ウィングだ。スターデストロイヤーとも戦い、真っ赤なガス惑星のヤヴィンをぐるっと巻いてヤヴィン4に降りていくU-ウィングを見送って終わる。その降りていくシーンこそ、映画本編で「おめでとう、助けに来ました」の直後の惑星降下シーンだった。


シールドゲート周辺を巡回するデストロイヤーもかっこいいが
ピザ型に駐留するデストロイヤーにもロマンがある


「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」は、スターウォーズの神話性を何倍にも高めてくれる、スピンオフ厨も大満足の最高のスピンオフだ。スピンオフは本編という存在ありきのもので、そこで初めて存在しうる。だがスピンオフのおかげで本編が更によくなることも事実だ。本編とスピンオフ、両方が揃って初めてその真価を発揮する姿はまさに1+1=2以上。スピンオフは本編になれないが、本編もまたスピンオフになれないのだ。その立ち位置を見事に活かし、本編には決してたどり着けない作品性に到達した、スピンオフの手本のような一作だった。

受勲式の見方が変わる一作ですねの図












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